長野県長野市の「リノベーションまちづくり」を視察してきました。
まず初めに、「株式会社まちづくり長野」のタウンマネージャー 越原照夫氏から(株)まちづくり長野の事業内容、取り組みの成果などの説明を受けます。
ちなみに、越原氏はタウンマネージャーになる前は、イオンの社員として活躍されていたそうです。
(株)まちづくり長野が手がけた「ぱてぃお大門 蔵楽庭」は、平成17年11月12日にオープンした空き蔵、民家を再生したテナントミックス商業施設です。
大門町は善光寺の門前に位置し、北国街道の宿場町として、多くの参拝客で賑わうとともに、卸問屋が軒を連ねる問屋町でした。
ぱてぃお大門の一角は、紙屋、下駄屋、金物問屋が建ち並んだ場所でしたが、空き店舗や空き家が増えていました。
そのような中、長野市の地元有志の手により明治時代の蔵、家屋などの歴史的資源を再活用しながら活性化拠点として、一帯を面的に整備する「パティオDAIMON計画」がまとめられました。
その後、(株)まちづくり長野が実施主体として、計画を引き継ぎ事業化しています。
ぱてぃお大門の施設概要
敷地面積 約942坪
筆数12筆(賃借11筆、取得1筆)
建物棟数15棟(改修11棟、新築4棟)
テナント14店舗(飲食10、物販4、サービス1)
ぱてぃお大門の資金調達
写真参照
説明の中で、土地は20年間で借地契約、建物は無償で借りたとのこと。
全体来場者は年間約70万人(レジ通過は約33万人)
全体売上高は年間約4億8000万円
特筆すべきは、リノベーションまちづくりが注目される遥か前の、平成17年からリノベーション事業をまちづくり会社が仕掛けていたことです。
しかも、ぱてぃお大門は黒字を確保しているとのこと。
質疑応答の際に、善光寺門前のリノベーションまちづくりについて聞いてみました、
ちなみに、善光寺門前のリノベーションまちづくりとは、行政や不動産オーナーが主導したものではなく、民間主体の取り組みでした。
2000年代までは小規模の事業者が蔵、古民家などの遊休不動産のリノベーションをそれぞれが個々に始めたものです。
越原氏によると、初めは信州大学で演劇を作っていた「ナノグラフィカ」というグループが、「空き家見学会」を始めました。
その後、不動産、建築を専門とする人達が空き家見学会に関わってきます。
特に2009年開設の「カネマツ(KANEMATSU)」は、農業用ビニールシートの加工場跡地(蔵)を活用して、カフェや古書店、シェアオフィスの入る拠点施設です。
当初から長野市内でリノベーションに関わってきた建築家の広瀬毅氏や宮本圭氏などがLLP(有限責任事業組合)「ボンクラ」を設立。空き家仲介・リノベーションを業務とするマイルーム(本社・長野市)を創業した倉石智典氏もここに入居しました。
その後、CANPグループというまちづくりグループが出来たことで、(株)まちづくり長野がバックアップをすることになり、毎週水曜日に集まり会議をしているそうです。
ちなみに、これまでリノベーションされてきた物件は、大家さんが1万円から高くても5万円代で、貸してくれたと越原氏は説明しました。
実際にリノベーションされた物件を見てきました。
東町ベース
文房具問屋の倉庫をリノベーションした物件で、設計事務所や不動産会社が入居する門前リノベーションの拠点。
カネマツ(KANEMATSU)
倉庫として使われていた蔵を、鉄骨や木造の平屋でつなぎ、ここをプロデュースする「ボンクラ」のシェアオフィスやカフェ、古本屋、不動産屋、会計事務所などが入居。
偶然にも、入居している会計事務所の方から、話を聞くことが出来ました。
入居した理由は、会計事務所を独立する際に、ボンクラの関係者が友人だったそうです。
家賃は周りの物件に比べるとはるかに安く、入居者同士の横のつながりが楽しいとのことです。
ただ、物件はボロいので、隙間風や雨漏りがあるのは難点のようですが、それも含めてユニークな物件です。
ナノグラフィカ
築100年の旧鍼灸院跡地を喫茶、編集室、住居に改装。善光寺門前の古民家改装の先駆けとして、町の青年部とともに「長野・門前暮らしのすすめ」プロジェクトを進行中。
ナノグラフィカの外観を撮影していると、近くの「箱山ふとん店」の若社長から声をかけて頂きました。
色々話していると、どうやら次のリノベーション物件を仕掛けている最中とのこと。
ペットと一緒に入ることができるカフェを作っていました。
箱山さんは「何もしなければ街は廃れます。私達が街を守っていかないといけないので、リノベーションを手がけています」と話しています。
タウンマネージャーの越原氏も、次のように話しています。
「税金を払えない企業しかないと地域は滅びる」
「このまま相続放棄された不動産が増えれば、行政に寄付となり、無税地が増えていく。ボロボロの空き家に税金を投入することは出来ない。」
長野市でお会いした人達は、間違いなく街を守るのは自分たちしかいないという、危機意識を持っていました。
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