昨日から今日まで、埼玉県深谷市の行政視察を終えて、須賀川市に帰ってきました。
今回は視察のバス移動中に読んだ「月刊正論12月号」に掲載されている「国民保護トホホな現実 福岡県行橋市のケース・スタディ」と題された行橋市・小坪慎也市議の記事について取り上げたいと思います。
皆様ご存知の通り、小坪議員は「しんぶん赤旗庁舎内配布問題」について地方議会で真っ先に問題提起された第一人者です。そのため「小坪議員=赤旗問題」というイメージが強いかもしれませんが、国民保護の件(有事における地方自治体の役割)についても真剣に取り組まれています。
特に、福岡県行橋市は航空自衛隊築城基地(第八航空団)の敷地の三分の一が行橋市に属しています。基地所在の自治体は自衛隊の存在が身近であり、特にF-15が配置されている空自の基地では、日常的に飛行訓練が実施されていますので、住民の安全保障意識は高いのではないでしょうか。
小坪議員は月刊正論の中でこのように書かれています。
住民の意識も「いざというときは、自衛隊が助けに来てくれる」と漠然と考えています。ミサイルが着弾した事態とは明確に有事であり、自衛隊は敵と命懸けで戦っています。私が「自衛隊は助けに来ません。来ることができないのですよ」と説明すると驚かれます。国民保護という考え方がしっかりと浸透しているとはいえません。(115ページ)
・・・私も、9月議会で取り上げましたが、「有事の際に国民保護法では、住民避難・警報の伝達・救援の実施などは地方公共団体の責務」となっています。須賀川市のように基地に面していない自治体では、たしかに国民保護の考え方は浸透していないのは仕方ないとしても、残念ながら基地に面した自治体でも「国民保護法における地方公共団体の責務の意味」は浸透していないようです。
日本全国の市町村には「国民保護計画」が作成されています。
須賀川市であれば「須賀川市国民保護計画」
http://www.city.sukagawa.fukushima.jp/1330.htm
行橋市であれば「行橋市国民保護計画」
http://www.city.yukuhashi.fukuoka.jp/doc/2013120200043/files/kettei18_2.pdf
その計画策定の元になるのが「国民保護法」です。
国民保護法第十六条 市町村長は、対処基本方針が定められたときは、この法律その他法令の規定に基づき、第三十五条第一項の規定による市町村の国民の保護に関する計画で定めるところにより、当該市町村の区域に係る次に掲げる国民の保護のための措置を実施しなければならない。
一 警報の伝達、避難実施要領の策定、関係機関の調整その他の住民の避難に関する措置
二 救援の実施、安否情報の収集及び提供その他の避難住民等の救援に関する措置
三 退避の指示、警戒区域の設定、消防、廃棄物の処理、被災情報の収集その他の武力攻撃災害への対処に関する措置
四 水の安定的な供給その他の国民生活の安定に関する措置
五 武力攻撃災害の復旧に関する措置
国民保護法第16条には市町村が行う五項目の実施内容が書かれています。
しかし、市町村自治体にはあまりにも重すぎる内容ではないかと、小坪議員は指摘されています。特に、「二 救援の実施」では、化学兵器着弾後に、市の消防署(常備消防)が、二次被害を抑えつつ救難活動を続けることは極めて難しいのが現状です。
また、「三 廃棄物の処理」については、がれき・倒壊家屋の処分を想定されている規定ですが、「例えば核弾頭による放射性廃棄物をまさか地方公務員に処理させるつもりではないでしょう。(159ページ)」と、書かれています。
さらに、最大の難問は市区町村の行政職員不足(マンパワー不足)であり、国民保護法が制定された平成16年には自治体の数は3100あったものが、平成26年4月時点では1718自治体と大幅に減少しているため、マンパワー不足により、有事の際に対応ができないのではないかと述べています。
法律が制定されたのは平成16年、各地方自治体で国民保護計画を策定したのは平成18年から19年です。
変化しているのは東アジアの安全保障情勢だけではなく、国民保護に対応する地方自治体の状況も合併による自治体減少、職員削減によって大きく変化しています。
やはり、国においては、地方自治体の現状を再確認して、国民保護法の市町村が行う責務を見直すべきではないでしょうか。一言でいえば、地方自治体の現状と法律が合わないのです。
小坪議員はそのほかにも月刊正論にて「地方議会での質疑と先端事例」「地方行政にできること」「不可欠な実践的訓練」を書かれています。
住民の生命と安全を守るのは「地方自治体」の責務であり、地方議員も行政職員も同じです。是非、月刊正論12月号の一読をお勧めします。
また、小坪慎也議員のblogもオススメです!
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